MISはMinimally Invasive Surgeryの略です。(日本では最小侵襲手術、極小侵襲手術、小切開手術などの訳語が使われます) 従来の一般的な手術法では15-20cmの傷を必 要としましたが(写真1)、わたくしは小さい傷(約7cm、写真2)によるMISー人工股関節手術を行っています。この結果、筋肉や皮膚へのダメージが非 常に少なく、早期に日常生活へ復帰できるような体にやさしい手術になりました。
MISは、1990年後半から2000年前半にかけて日本でも行われるようになりました。しかしながら、たいへん難しい手術であり病気の程度によっては できないこともあるので、全国でも導入している病院は少なく、この手術法に熟練した医師の診察・治療をおすすめいたします。この手術法によって、アメリカ では入院の必要のない日帰り手術も可能になりました。わたくしどもでは、4日から14日間の入院プランで行なっています。

写真3(人工股関節)
1960年代より、人工股関節置換術は世界的に広く行われる手術になりました。
人工股関節置換術は、変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、関節リウマチなどの疾患による股関節の障害の治療に行われ、世界中で年間およそ50万件行われています。
人工股関節置換術は、大腿骨側と骨盤側の2つに分かれ、コバルト・クロム合金やチタン合金などの金属で作られています。骨盤側は、通常、金属製の殻のなかにポリエチレン製のカップが装着された構造になっています。
人工関節を骨に固定する方法には、骨セメントを使うセメント固定と、骨セメントを使わないセメントレス固定の2つの方法があります。わたくしは骨セメントを使わずに、人工股関節と骨が直接結合する方法を採用しております。
人工股関節置換術には輸血を必要としますが、わたくしの方針として輸血をしないように、手術前から患者様ご自身の血液をあらかじめ貯めておき、手術による出血をすべてご自分の血液(自己血)で補います。術前に貯血したMISの場合、輸血回避率はほぼ100%です。
股関節の痛みが劇的に改善する人工股関節手術ですが、問題点もあります。できるだけ、その問題を起こさないようにするのが私ども医師の義務と考えております。( )内はアメリカ整形外科学会発行の書籍などに記載されている合併症発生頻度です。
- 手術中骨折(5%):
- 人工股関節を設置するときに骨盤や大腿骨に骨折を生じることが稀にあり、ワイヤや金属性プレートを使用して治療を行うことがあります。
- 脱臼(2~3%):
- 脱臼した場合、麻酔をかけて整復(元に戻すこと)します。通常、手術の必要はありません。
- 下肢深部静脈血栓症(10~20%):および肺塞栓症(0.5%):
- 下肢の静脈や肺の血管に血の塊(血栓)ができる現象です。血栓がある場合、抗凝固薬による治療が必要です。
- 感染(1%以下):
- 稀に細菌による感染が発生することがあります。
- 人工関節のゆるみ(10年で5%):
- 時間が経過するにつれ人工股関節周囲の骨に隙間、「ゆるみ」が発生することがあり、人工股関節を取り替える手術(再置換術)が必要になります。
- 人工関節の磨耗:
- 高密度ポリエチレンという人工軟骨が1年間に平均0.1mm磨耗します。磨耗が激しい場合は手術によってポリエチレンの交換をします。
- 骨溶解(10年で5~30%):
- 磨耗したポリエチレンの微粒子が股関節の骨を弱くすることがあります。
- 神経麻痺(1~4%):
- 手術後に下肢のしびれや筋力低下という神経症状が出現することがあります。
- 血管損傷(0.3%以下):
- 人工股関節を挿入する際、血管を傷つけ出血する場合があります。
- 下肢長不等(50%以下):
- 人工股関節を挿入するとき、手術前の程度に応じて下肢の長さを伸ばします。逆側に比べて短い場合はできるだけ下肢の長さを揃えるようにします。
- 腫脹・皮下出血(およそ100%):
- 手術後の腫れ(腫脹)や内出血(皮下出血)で、次第に消失していきます。
- 大腿部のだるさ(5~10%):
- 骨のなかに堅い金属がはいるので大腿部のだるさ、違和感、鈍痛、疼痛などが発生する場合があります。
- 異所性骨化(1~53%):
- 股関節の周囲に骨ができる現象で、日本人には非常に少ないといわれています。

写真4(手術室―クリーンルーム)


