人工股関節手術(置換術)について

※ 写真は、患者様本人の掲載の許可をとっております。

1.股関節とは?

股関節は、太もものつけ根にある大きな関節で、単体では人体最大の関節です。お椀の形をした寛骨臼(かんこつきゅう)臼蓋(きゅうがい))が骨盤にあり、ボールの形をした大腿骨頭(だいたいこっとう)がぴったりと収まった構造になっています。正常な股関節では大腿骨頭と臼蓋のそれぞれの表面が、関節軟骨(なんこつ)に覆われていて股関節の動きを自由に滑らかにしています(図1、写真1)。


写真1(正常股関節のレントゲン写真)

図1(股関節)

2.股関節の病気

股関節の痛みの原因には、変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、関節リウマチなどいろいろな病気があります。そのなかでも、 変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)によるものが最も多く、当院で診察を受ける方の90%以上がこの病気です。

変形性股関節症は関節の軟骨が変性、消失し、痛みや機能障害を引き起こす疾患のことです。日本人の変形性股関節症の有病率(病気にかかっている割合)は1.0~4.3%で女性に多く、原因として先天性、遺伝性の臼蓋形成不全や股関節脱臼が日本人に多いのが特徴の一つです。変形性股関節症は進行性の病気であり、臼蓋形成不全だけがある「前期」(写真2)、関節軟骨が部分的に傷ついている「初期」(写真3)、関節軟骨が一部消失して骨と骨が接触し始める「進行期」(写真4)、関節軟骨がほとんど消失して、骨の変形が著しい「末期」(写真5)と進んでいきます。


写真2(前期)

写真3(初期)

写真4(進行期)

写真5(末期)

写真6(人工股関節)

3.人工股関節

1960年代より、人工股関節手術(置換術)は世界的に広く行われる手術になり、日本では年間およそ5万件が行われています。末期や進行期の変形性股関節症、重症の大腿骨頭壊死症、関節リウマチに対して、手術をしない治療(保存的治療)によって痛みの軽減がない場合に人工股関節手術(置換術)が行われます。

人工股関節は、大腿骨側と骨盤側の2つに分かれ、コバルト・クロム合金やチタン合金などの金属で作られています(写真6)。骨盤側は、通常、金属製の殻のなかにポリエチレン製のカップが装着された構造になっています。人工関節を骨に固定する方法には、骨セメントを使うセメント固定と、骨セメントを使わないセメントレス固定の2つの方法があります。わたくしは骨セメントを使わずに、人工股関節と骨が直接結合する方法を採用しております。


4.MISとは

MISはMinimally Invasive Surgeryの略です。(日本では最小侵襲手術、極小侵襲手術、小切開手術などの訳語が使われます) 従来の一般的な手術法では15~20cmの傷を必要としましたが(写真7)、MISでは約7cm(写真8)と1/3~1/2程度です。この結果、筋肉や皮膚へのダメージが非常に少なくなり、入院期間が短く、美容的に良好で、早期に社会復帰できるようになりました。わたくしは2003年からMISによる人工股関節手術(置換術)を始め、現在(2014年)まで4000件以上の手術を行っています。


写真7(20cmの傷の通常手術)

写真8(7cmの傷が1つあるMIS)

5.自己血貯血

人工股関節手術(置換術)には輸血を必要とすることが多いのですが、わたくしの方針として輸血をしないように、手術前から患者様ご自身の血液をあらかじめ貯めておき、手術による出血をすべてご自分の血液(自己血)で補います。術前に貯血したMISの場合、輸血回避率はほぼ100%です。

6.手術後の経過

わたくしどもでは、通常4日から12日間の入院期間で治療を行っており、手術後翌日から歩行訓練を始め、トイレやシャワー浴もご自分でできるよう指導しています。

7.人工股関節の問題点

股関節の痛みが劇的に改善する人工股関節手術(置換術)ですが問題点もあります。できるだけ問題を起こさないようにするのがわたくしどもの義務と考えております。
( )内はアメリカ整形外科学会発行の書籍などに記載されている合併症発生頻度です。

手術中骨折(5%):
人工股関節を設置するときに骨盤や大腿骨に骨折を生じることが稀にあり、ワイヤや金属性プレートを使用して治療を行うことがあります。
脱臼(2~3%):
脱臼した場合、麻酔をかけて整復(元に戻すこと)します。通常、手術の必要はありません。一般的には2~3%の脱臼率ですが、わたくしの手術による脱臼率は1%未満です。
下肢深部静脈血栓症(10~20%):および肺塞栓症(0.5%):
下肢の静脈や肺の血管に血の塊(血栓)ができる現象です。血栓がある場合、抗凝固薬による治療が必要です。
感染(1%以下):
稀に細菌による感染が発生することがあります。
人工関節のゆるみ(10年で5%):
時間が経過するにつれ人工股関節周囲の骨に隙間、「ゆるみ」が発生することがあり、人工股関節を取り替える手術(再置換術)が必要になります。
人工関節の磨耗:
高密度ポリエチレンという人工軟骨が1年間に平均0.1mm以下で磨耗します。磨耗が激しい場合は手術によってポリエチレンの交換をします。
骨溶解(10年で5~30%):
磨耗したポリエチレンの微粒子が股関節の骨を弱くすることがあります。
神経麻痺(1~4%):
手術後に下肢のしびれや筋力低下という神経症状が出現することがあります。
血管損傷(0.3%以下):
人工股関節を挿入する際、血管を傷つけ出血する場合があります。
下肢長不等(50%以下):
人工股関節を挿入するとき、手術前の程度に応じて下肢の長さを伸ばします。逆側に比べて短い場合はできるだけ下肢の長さを揃えるようにします。
腫脹・皮下出血(およそ100%):
手術後の腫れ(腫脹)や内出血(皮下出血)で、次第に消失していきます。
大腿部のだるさ(5~10%):
骨のなかに堅い金属がはいるので大腿部のだるさ、違和感、鈍痛、疼痛などが発生する場合があります。
異所性骨化(1~53%):
股関節の周囲に骨ができる現象で、日本人には非常に少ないといわれています。
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